トリクルをクローズします

突然の発表ではありますが、この度、トリクルという、売りたいアイテムの出品代行サービスを終了する事にしました。スケジュール等に関しては下記をご覧ください。

サービス終了のお知らせ : bit.ly/3hD549J

約2年の運営を経て、本当にたくさんの事がありました。今でも依頼が引っ切りなしな状況ですが、僕とチーム、Spiceが今持っている力では、当初描いていた未来が作れないと判断しました。

利用してくださった方、また、私たちを応援してくださっていた方々にこれまでの経緯や終了に至った理由などの説明が必要だと思い、久しぶりに筆を取りました。

サービスリリース時の想定

トリクルは、2018年5月頃にリリースをしました。

2018年の頭頃、ユーザーリサーチを30人程にご協力いただきました。

フリマアプリに自分で出品するのは面倒、でも買取に出すのもなあ、という心理がある事に着目し、「玄関で売りたいアイテムを渡すだけでフリマアプリに出品できる」みたいな事ができると、使われるんじゃないか?と思いサービスを作りました。

2018年の1月頃から簡易的なLPを作って、LINE@とFBメッセンジャーでテストをした結果、数十人の方に利用していただけて、1人あたり平均40~50点くらいの商品を依頼してくれました。思ったよりも平均出品点数が多く、「意外と皆売りたい物家に眠らせてるんだな〜」と感じたのを鮮明に覚えています。また、この点数を自分で出品するのは確かに既存のフリマアプリでは面倒だよね〜とも思いました。この時の平均出品点数は今も変わらず推移しています。

圧倒的に簡単な出品体験を

トリクルは、1ユーザーに対して圧倒的に「簡単だ!!」と思える出品体験を提供したいと思い、サービスを作りました。物を売りたい思ったらいつでも気軽に呼べて、梱包等の手間無しに持って行ってくれて、よしなに売ってくれる。その結果が自分の期待値か、それ以上である。なので、また使ってくれるし、知人に口コミしてくれる。そんなストーリーを持ってはじめました。

なので、最初は自社でオペレーションをして、高いホスピタリティが提供できる仕組みを作る。それが出来たら倉庫事業者、物流事業者等にオペレーションを委託して規模を拡大する、そんな事を考えていました。

ユーザー宅への集荷オペレーションから、全ての商品に対応するささげ/出品オペレーション、保管/梱包発送オペレーションという大きく3つを、全て自社でやっていました。

会社として初めてのプレスリリース

2018年5月、当時は会社のお金も少なく、ユーザー認知獲得の1つとしてPR Timesさんにてプレスリリースを打ちました。そしたら、これがめちゃくちゃSNSでバズり、あっという間に予約がいっぱいになりました。

増える商品、生まれる綻び

リリースから2週間で約1万アイテム以上が集まりました。当時オフィスを25坪くらい借りていましたが、全部がアイテムで埋まってしまい、シェアオフィスの他のスペースなども借りてなんとかしていました。リリース当時もアルバイト含めて5~6人しかいなかったので、ツイッターとかでめちゃくちゃ手伝ってください!という感じで急遽人を集めました。毎日がてんやわんやでした。

ひたすら依頼を受けた結果、オペレーションやサービスがこの量を想定した仕組みになっていなかったので、かなり綻びが出ました。管理含め、オペレーションの仕組み、組織の役割分担もめちゃくちゃになり、すごく大変だったのを覚えています。

サービスの停止も検討しましたが、せっかく掴んだユーザーニーズを逃すまいという思いから、停止をせずに、可能な範囲で依頼を受け付け、1個1個改善していこう、という方針でいきました。

止まらない依頼、膨れるオペレーション

トリクルは、その後も認知が拡大されつづけ、広告宣伝費をかけずに依頼で溢れる状態でした。ありがたい一方で、オペレーションは膨大に膨れ、全くと言っていいほど管理出来ない状態でありました。

後々気づく事になりますが、トリクルが行っていたオペレーションは、かなり難易度の高いオペレーションでした。

ざっくりどういう状態かというと、リリース初期段階から、月間数万点の新規SKUが1ピースで増えていき、全てのささげ(撮影, 採寸, 原稿)を行う、という状態です。EC出身の方なら少しだけイメージがつくかと思います。

コンビニのSKUがだいたい3,000~4,000くらいみたいなので、毎月1点物の商品が並ぶ新しいコンセプトのコンビニを10個くらい作り続ける、みたいな感じでしょうか。

各工程の生産性も、新規SKUが増え続けるという観点から、均質化しづらく、永遠と生産効率の基準を定義出来ていない状態でした。

改善改善、また改善

そんな状態から、1個1個オペレーションを定義し、システムを開発し、業務を標準化し、人に依存しないオペレーションシステムの構築にひたすら投資をし続けていました。

主には管理画面の作業工程を少なくする事、データの入力ミスを減らす事、データ入力を自働化する事を中心に開発していました。

結果的に、オペレーション効率は当初より10x以上のパフォーマンスを出す事が出来ました。

オペレーションシステムよりも大事な事に気づく

リリースから1年程経過して、やっと満足行く仕組みが整ってきた感じでした。と同時にこの時期から、改善による生産性の向上がピタッととまります。何故かオペレーションの各工程において効率化するであろう課題を解決しても、効率が上がらないのです。何度も何度も試しても効率が上がらず、おかしいと思っていたのですが、ある日、改善で生まれた時間が、生産ではない別の事に使っている事に気づきました。そして、オペレーションシステムよりも、人が生産的に働ける会社のルールや仕組みの方が、生産性に影響がある事に気がつきました。

文化こそ組織の全て

僕はインターネットサービスを作る事が好きで、プロダクトの0→1、トリクルをリリースして1年半くらいは自分で出来る範囲のコードを書いていました。

逆に、組織に関してはあまり関心が持てていませんでした。人は皆自立していて、目的の為にピュアに全うできる、という幻想期待を抱いていたので、ルールを特に作らず、個々人の考えを尊重し、人は皆成長する事ができる、と思っていました。

ただ、その中で結局事業が伸びなかったり、お金が尽きそうで焦ったりしてしまうと、メンバーとの期待値がズレているので、僕もメンバーもストレスが溜まってしまう、みたいな事がたくさんありました。

また、文化の違いを気にしすぎなかったせいで、小さい頃に組織文化が多様になりすぎて、意思決定や変化に多くの承認や理解が必要となっていました。

結果的に、組織として一貫した思想の定着だったり、目標達成の仕組みをうまく作る事が出来ていませんでした。

この辺は、トリクルを運営している間に1番心で学んだ事かもしれません。

事業者への委託を模索するも

当初の想定のように、事業者への委託を模索しておりましたが、委託するには一定の物量が必要、それまでは社内で頑張る必要がある、でも組織のマネジメントやルールが機能していないので生産性が安定, 向上せずに人が増やせない、増やしても積み上がらない、積み上がったら次はユーザーの獲得がオーガニック, リファラル頼りだったので依頼を極端に積み上げられない、みたいな感じで、めちゃくちゃつまづいてしまい、実現が間に合いませんでした。

ニーズはありつつも、戦略が間違っていた

トリクルは今もオーガニックで月間数百件、数万点の依頼が来るサービスです。都内23区での提供にかぎっていたので、恐らく潜在的なニーズもかなりあるでしょう。

しかし、当初の想定が思ったよりも難易度が高い事に気づきました。トリクルは、徹底したソフトウェアによる仕組みではなく、組織の仕組みが必要でした。ここに気付かされてから、その方向への転換にかかるコストと残キャッシュのバランスをみた時に、転換が難しく、且つ既存のメンバーにも大きな負担をかけてしまうと判断し、トリクルのサービス終了を決断しました。

最後に

約2年間、本当に様々な事がありました。拙いオペレーション、ソフトウェアながらも、多くの方にご利用いただき、感謝しかございません。

今回のサービス終了に至った中で、本当に色んな事がありました。楽しかった事、感動した事、感謝した事ももちろんの事ですが、ほとんどは辛く、苦しく、もがき続けた日々でした。

全て僕の力不足が原因で終了という結果になってしまいました。ユーザーはじめ、関係者の皆様に申し訳ない気持ちでいっぱいです。大変申し訳ございませんでした。

Spiceで、トリクルの成長に関わってくださった全てのみなさま、結果が出せず、積み上げた物をクローズとしてしまい、本当にごめんなさい。

今後、僕と一部のメンバー、Spiceはまた新しい旅に出ます。この事業を行って得た学び、経験はとても大きな物です。今はまだ事業を終了する事とし、穴が開いた状態ではありますが、次に何をするかは少しづつ考えたりもしていて、非常にワクワクしています。

事業クローズという意思決定を理解してくださった株主の皆様、本当にありがとうございます。本当に機会に恵まれていて感謝しかありません。

次は改めて、僕が大好きなソフトウェア作りで勝てる領域を探り、人が求める物、そして大きな事業になる領域を見つけ、数回フルスイングしたいと思います。

皆様、本当にありがとうございました!

その他

何か意見や要望など、もしありましたらツイッターの僕のアカウントまでDM等いただければと思います。

@seikatok

また、企業の方で「トリクルを続けたいので譲渡してくれ」という場合はご連絡ください。この市場自体は可能性があると思っていますし、恐らく僕等よりもうまくできる人がいると思います。

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